銀行窓口で販売される外貨建て保険の苦情が国民生活センターに多く寄せられています。
特に、一時払い(一括払い)の外貨建て保険の販売でトラブルが多いです。
外貨建て保険の中には、契約した段階で手数料がかかり元本割れするものがあります。
低金利時代で銀行の本業であった貸金業で十分な利益をあげられない背景があり、販売手数料の高い外貨建て保険を販売することでトラブルが起きています。
特に、高齢者が銀行窓口で意図せず外貨建て保険に加入してしまうケースが多いです。
国民生活センター・生命保険協会・金融庁は事態を重く見て対策を講じているところです。
外貨建て保険にどのような苦情があるのか、見ていきましょう。
※くれぐれも言っておきますが、外貨建て保険自体は良い保険ではありません。ただ、売り方に問題があるという視点でお伝えします。
銀行窓口での外貨建て保険販売の苦情
外貨建て保険の苦情は、
- 「元本保証があると思っていたが元本保証ではなかった」
- 「定期預金に預けようとしたら外貨建て保険を勧められた」
- 「為替で損をしてしまった」
- 「契約からすぐの解約は解約金が小さくて、解約したくても解約できない」
- 「クーリングオフしたのに、為替で損してしまった」
などが多いです。
特に、高齢者の苦情が多いようです。
投資経験もないようなお年寄りに一時払い(一括払い)の外貨建て保険を勧める銀行員さんもいるようです。
独立行政法人国民生活センターの調べによると、2017年の銀行窓販の保険に関する相談は229件あったそうです。
2007~2017年の相談件数の推移と、相談のうち60歳を超える人の割合を見てみましょう。
相談件数 | 60歳以上の相談者の割合 | |
2007年 | 291 | 69.7% |
2008年 | 629 | 78.8% |
2009年 | 519 | 79.6% |
2010年 | 551 | 80.3% |
2011年 | 606 | 80.5% |
2012年 | 605 | 80.4% |
2013年 | 421 | 81.2% |
2014年 | 358 | 79.7% |
2015年 | 410 | 76% |
2016年 | 520 | 82% |
2017年 | 229 | 78.8% |
引用元:独立行政法人国民生活センター
金融庁などの指導が行われていることもあるかと思いますが、2017年は相談件数が減っています。
相談件数が減ってよかったですね。
ただし、60歳以上の相談者の割合は8割近くを占めています。
国民生活センターへの相談は、外貨建て保険を契約した高齢者の子供からの相談も多いそうです。
高齢者の方は銀行に定期預金を預けに行っただけのことが多く、ひどいケースだと高齢者の方が、
- 「まさか保険だとは思わなかった」
- 「外貨だとは思わなかった」
- 「定期預金だと思った」
など、まったく外貨建て保険に加入した意識がないケースもあります。
核家族化が進む時代ですから、高齢者の方が外貨建て保険に加入したことを家族が発見するのが遅れてしまうケースが多いです。
クーリングオフ期間(8日間)を過ぎてしまい、クーリングオフができなくなってしまうケースも多いです。
保険はクーリングオフ期間を過ぎてからすぐに解約すると元本割れする商品が多いです。
クーリングオフ期間を過ぎてから異変に気づき、銀行に解約を申し出ると大きく元本割れしているトラブルが多いです。
銀行が外貨建て保険を販売したい理由
銀行窓口で外貨建て保険の契約は、直近3年間で100万件を超えています。
銀行が積極的に外貨建て保険を販売しているのがわかりますね。
銀行が積極的に外貨建て保険を販売したいのには理由があります。
低金利・マイナス金利の時代ですから、銀行の本業である貸金業では利益が少ないからです。
企業にお金を貸すのも、住宅ローンも低金利ですから銀行の実入りは少ないです。
例えば、変動金利の住宅ローンは0.4%~0.5%くらいの金利です。
また、貸金業で利益が小さいとなると定期預金を預かっても銀行のメリットは小さいです。
ところが、外貨建て保険を販売すると預入金額の7~9%くらいの販売手数料が銀行に入ります。
住宅ローンが0.4~0.5%ですから、外貨建て保険を売って7~9%の利益を得た方が得ですよね。
※当然、販売手数料の原資はあなたが預けるお金です。
銀行は預金者の残高を把握できるため、一時払いの外貨建て保険を販売しやすいです。
定期預金を預けにくる人には「こちらの方が金利が高いですよ」と勧めやすい立場にもあります。
「銀行が言うんだから大丈夫だろう…」と安心して、たいして説明も聞かずに契約してしまう高齢者も多いのです。
保険でありながら健康告知が簡易で、80歳を超えても契約できる外貨建て保険もあるため、銀行も売りやすいのです。
こうしたトラブルを減らすために、金融庁は銀行が外貨建て保険を販売するときは契約前に販売手数料を顧客に開示するよう義務付けました。
顧客優先ではなく販売手数料が高い保険だけを提案することを防ぐためにも販売手数料開示は有効でしょう。
※今後は外貨建て保険のトラブルは減っていくとは思います。
また、銀行は外貨建て保険だけでなく投資信託も積極的に販売しています。
投資信託のトラブルについては「投資信託のリスクやデメリット!初心者が大損する毎月分配金型」を読んでみてください。
銀行員にはノルマがある
銀行窓口で銀行職員が一生懸命外貨建て保険を勧めるもう1つの理由は「ノルマがあるから」です。
前述のとおり、利益率の高い外貨建て保険は銀行職員にも販売ノルマがあるのです。
高齢者が高額の保険を契約する際は、親族(子供など)の同意が必要と決められている銀行もあるのですが、ノルマを達成するためには家族に同意をとると時間がかかってしまいます。
また、リスク性のある保険だとわかれば親族から同意を得づらいこともあります。
ノルマ達成のために無理やり外貨建て保険を販売してしまう窓口職員がいるのも事実です。
何とか契約してほしいため、顧客に不利になるようなリスク説明を省いて説明したり、リスクがたいしたこと内容に説明するケースもあり、後にトラブルになりやすいです。
銀行職員の中には保険に詳しくない職員もいます。
職員にも悪意はないのですが、知識不足で説明不足になってしまい、後で「話が違う」と苦情になるケースもあります。
外貨建て保険のリスクや手数料
冒頭でもお伝えしたとおり、外貨建て保険は良い保険です。
ただし、リスクを理解した上で活用することが大切です。
リスクを知らずに契約してしまうのは言語道断です。
外貨建て保険のリスクを説明しますので、契約前に確認してください。
販売手数料がかかる
前述のとおり、外貨建て保険に加入すると販売手数料が差し引かれます。
保険商品によって販売手数料は変わりますが、販売手数料が高い保険だと預けた金額の7~9%が引かれます。
考えてもみてほしいのですが、販売手数料の7~9%を取り戻すには2~3年かかります。
例えば、米ドルの利率は約3%ですので、単純計算ですが3%×3年=9%となるため、販売手数料を取り戻すのに2~3年かかるのです。
保険期間10年で預けた人は、最初の3年は販売手数料を取り戻す期間ですから、実際に増えるのは4年目以降ということになります。
外貨建て保険に契約してすぐに解約すると元本割れしてしまう理由は「販売手数料があるから」です。
あくまでも中期的・長期的な運用をするのであれば外貨建て保険はメリットのある保険です。
※為替リスクはありますが。
外貨建て保険は、くれぐれも定期預金のようにいつ下ろしても満額もどってくるようなものではないので注意してください。
為替リスク
外貨建て保険には為替リスクがあります。
為替リスクを説明します。
例えば、1$=100円のときに100万円をドルに換えると、100万円÷100円=10000$になります。
その後、為替が変動して1$=90円になったとしましょう。
1$=90円のときに10000$を円に戻すと、10000$×90円=90万円になります。
100万円が90万円に減ってしまっています。
このように為替が変動することで外貨を円に戻すときに減ってしまうことを為替リスクといいます。
円高になると損、円安になるとトクになります。
円高とは1$の円の値が小さいことです。※例)1$=50円
円安とは1$の円の値が大きいことです。※例)1$=200円
為替の動向は誰にもわかりませんので、為替リスクをゼロにすることはできません。
円安のときに外貨建て保険を購入して、満期のタイミングや解約のタイミング、年金受取のタイミングで円高だと、元本割れするリスクがあります。
外貨建て保険で為替リスクを下げるコツは、
- できるだけ円高のときに保険を購入する
- 満期や解約のタイミングで円高のときは円で受け取らず外貨で受け取り、円安になったら円に戻す
です。
外貨建て保険によっては、満期後に外貨のまま保有することができる商品もあるため、商品はきちんと調べましょう。
特に、一時払いの外貨建て保険は為替リスクを受けやすいので、加入のタイミングと円に戻すタイミングはしっかり見極めましょう。
為替の交換手数料がかかる
円を外貨にしたり、外貨を円に変換するときは為替交換手数料がかかります。
外貨建て保険によって為替手数料は違います。
為替の交換手数料が安い外貨建て保険は1$あたり1銭ですが、高い保険商品だと1$あたり1円の為替交換手数料がかかります。
1銭と1円では100倍の差があります。
手数料が100倍違うのはさすがに大きな差ですよね。
100,000$を購入しようとすれば、為替交換手数料は、
- 1銭の場合:1000円
- 1円の場合:10万円
と大きく違います。
また、円を外貨にするときと、外貨を円に戻すとき両方に為替交換手数料はかかります。
上記の100,000$を購入し、その後100,000$を円に戻すとき、
- 1銭の場合:2000円
- 1円の場合:20万円
の為替交換手数料の差があります。
手数料率で計算すると、
- 1銭:0.01%
- 1円:1%
ということです。
仮に外貨建て保険の利率が3%でも、為替交換手数料で1%かかると手取りは2%になってしまいます。
為替交換手数料は契約前に必ず確認してください。
年金管理費がかかる
外貨建て保険は年金受け取りをすることもできます。
※まとめて解約せず、1年ごとに切り崩していく受け取り方です。
外貨建て保険の商品によっては、年金受け取りに年金管理費がかかります。
毎年の年金受取額の1.4%くらいがかかる外貨建て保険もあります。
仮に外貨建て保険の利率が3%であっても、年金管理費で1.4%かかると手取りは1.6%になってしまいます。
年金管理費がどれくらいかかるかも契約前に確認しましょう。
クーリングオフしても為替交換手数料や為替リスクがあり元本割れすることも…
契約から8日以内であればクーリングオフが可能ですが、クーリングオフで満額が返ってくるとは限りません。
円を外貨に交換するときの為替交換手数料はクーリングオフしてもかかります。
よって、クーリングオフしたのに数万円損することがあります。
また、クーリングオフ期間も為替は変動しているため為替リスクがあります。
契約からクーリングオフまでの間に円高になってしまうと満額が戻ってきません。
クーリングオフしたのに為替交換手数料や為替リスクで満額が戻らないケースでの苦情も、国民生活センターに寄せられています。
参考:独立行政法人国民生活センター「銀行窓口で契約した外貨建て生命保険のトラブル」
外貨建て保険は目的を明確にすれば大変良い保険です。
ですが、何のために加入するのかわからない加入は絶対にやめましょう。
消費者が気をつけることも必要
保険商品の銀行窓販が解禁されて10年が経ちました。
ですが、保険の銀行窓販はまだまだ問題も多いということです。
保険の契約内容は約款という冊子(CD-ROMなど)にすべて書かれています。
約款をすべて読めば自分に必要か必要でないかの判断はつきますが、約款は情報量が多くわかりにくい文章で書かれているため、隅々まで読む人はいません。
保険を契約するときには「意向確認書」という書類を書きます。
意向確認書は「リスクの説明を受けたか」「リスクを知った上で契約するか」などの確認書です。
意向確認書にサインをしてしまうと消費者の方が圧倒的に不利になります。
顧客側が「そんなの聞いていない!」と苦情を言っても、意向確認書にサインをしてしまっているため「話を聞いた」ということになってしまうのです。
何度もいいますが、外貨建て保険自体は良い保険です。
ですが、加入前に第三者の専門家に相談することをおすすめします。
※当相談センターにご相談いただいてもかまいません。
保険ショップでも販売手数料が高い保険が優先的に売られている?
保険ショップでも販売手数料が高い保険商品が優先的に販売されていることが問題になりました。
複数の保険会社を取り扱うことで公平に見えますが、販売側が儲かる保険商品だけを並べて顧客に選ばせていることを金融庁が指摘したのです。
銀行同様、保険ショップでも保険の販売手数料の開示が義務化されるかもしれません。
※保険ショップで働く人は少々やりにくくなるかもしれませんね。
そもそも、販売手数料が高い保険ということは、顧客側の手取りが減るという意味です。
銀行同様に、今後は公平な販売ができる体制づくりが進んでいくことでしょう。
生命保険協会が外貨建て保険の販売員の教育に乗り出す
外貨建て保険の苦情が増えているため、一般社団法人生命保険協会では外貨建て保険の販売員の教育方法の見直しを保険業界全体で取り組む姿勢を発表しています。
消費者が外貨建て保険の内容をきちんと理解し、目的をもって外貨建て保険に加入することが大切です。
トラブルにならないように保険業法を順守することが求められます。
生命保険協会では銀行窓販の外貨建て保険の苦情も問題視しており、全国銀行協会などとも対策を講じていくようです。
外貨建て保険自体は良い商品ですから、きちんと理解した上で加入するのはメリットがあります。
今後苦情が減るを期待したいですね。
外貨建て保険のメリット
外貨建て保険にはメリットもあります。
メリットも知り、加入する目的を明確にすれば有益な保険です。
外貨建て保険の加入を検討している人も、すでに外貨建て保険に加入している人もメリットを活かしてほしいです。
外貨では増える
債券など安定した方法で運用している外貨建て保険は、時間とともに外貨では増えていきます。
例えば、米ドル利率3%は日本円での運用では不可能な利率です。
日本円の利率よりも高い利率であるのが外貨建て保険のメリットです。
中には利率の最低保証がある外貨建て保険もあるため、市場の金利が下がっても安心です。
ただし、保険は短期解約をするとほとんどが元本割れします。
中期・長期の運用として活用するのが大切です。
保険の中には「変額保険」というものもあります。
変額保険とは債券だけでなく株式などリスク性の高い運用方法も指定できる保険です。
外貨建ての変額保険もあるため、外貨建て保険商品は加入前にしっかり確認しましょう。
中にはリスク性の高い外貨建て保険もあるため注意が必要です。
検討している外貨建て保険や、勧められている外貨建て保険についてわからないことがある場合は、当相談センターにご相談いただいてもかまいません。
生命保険料控除が使える
外貨建て保険は生命保険ですので生命保険料控除が使えます。
確定申告の際に生命保険料控除を使えば所得税・住民税の節税になります。
また、マニュライフ生命保険こだわり個人年金(外貨建て)や三井生命保険ドリームフライトは、個人年金保険料税制適格特約を付加すれば保険料が個人年金保険料控除の対象になります。
所得税が安い
生命保険の満期金や解約金を受取るとき、自分が払った金額よりも増えた場合は、増えた分に所得税がかかります。
生命保険の満期金や解約金の所得税は「一時所得」で計算します。
一時所得の計算方法は『(差益-50万円)÷2×その年の所得税率』です。
「-50万円」があるため、保険の利益が50万円未満であれば非課税です。
また、「÷2」があるため、所得税率は半分になります。
所得税率は、
所得金額 | 税率 | 一時所得部分の税率 |
195万円以下 | 5% | 2.5% |
195万円超~330万円以下 | 10% | 5% |
330万円超~695万円以下 | 20% | 10% |
695万円超~900万円以下 | 23% | 11.5% |
900万円超~1800万円以下 | 33% | 16.5% |
1800万円超~4000万円以下 | 40% | 20% |
4000万円超 | 45% | 22.5% |
となります。
銀行預金の場合は差益に対して一律20%課税ですので、所得が1800万円以下の人は保険の一時所得の方が手取りが多くなります。
ただし、契約から短い期間で解約した場合や、保険を年金受け取りした場合は一時所得ではありませんのでご注意ください。
保険を年金受け取りした場合は雑所得計算です。
雑所得の計算方法は「退職金の税金の計算方法」を読んでみてください。
相続税の節税ができる
死亡保険金は「法定相続人数×500万円」は相続税が非課税です。
法定相続人とは、簡単にいうと家族のことです。
例えば、夫が保険に加入し、家族が妻・息子・娘の3人の場合は、
法定相続人3人×500万円=1500万円
が非課税です。
夫が遺す財産のうち1500万円は相続税の課税対象になりません。
保険に加入するだけで相続財産を非課税にできるメリットがあるのですが、この死亡保険金の非課税枠を使っている人は少ないです。
簡単に相続税の節税ができるためメリットがあります。
相続については「相続や相続税の相談」を読んでみてください。
保険金受取人を指定できる
外貨建て保険も死亡保険金受取人を指定できます。
死亡保険金は「受取人の固有の財産」と言われており、相続が起こった際に他の相続人(遺された家族)と分け合う必要がありません。
例えば、
- このお金はどうしても長男に渡したい
- このお金はどうしても孫に渡したい
- このお金はどうしても夫に渡したくない
などの目的があれば、死亡保険金を指定できる保険を活用するメリットがあります。
また、人が亡くなると銀行口座が凍結されてしまいます。
葬儀のお金などすぐに遣う必要があるお金がおろせないと大変です。
葬儀費用などすぐに必要なお金は保険に変えておくと、亡くなった時点でお金は死亡保険金受取人のものです。
保険金の給付は早いので、死亡保険金受取人がすぐに資金を用意することができます。
また、日本人の財産が不動産が多く、相続税を納税するときに「現金がない」という問題が発生する人も多いです。
保険は「亡くなったときに現金が手に入る」という金融商品ですので、相続税の納税資金として外貨建て保険を活用することもできます。
「長男にかかる相続税が多い」など、相続税を多く払う人が明確であればその人を死亡保険金受取人に指定するとメリットがあります。
保険料が安い
外貨建て保険は「お金を増やす」という目的でとらえられがちですが、そもそも生命保険の機能があります。
利率が高いため、円建ての保険よりも保険料が安いというメリットがあります。
同じ保障額を用意するなら、円建ての保険よりも外貨建て保険の方が保険料が安いです。
分散投資できる
日本人の多くは円の財産しか持っていません。
ですが、円の財産しかないということは日本経済が大きく下落すると影響を受けてしまいます。
自分の財産を円と外貨に分けておくことで、リスクを分散することができます。
為替はシーソーのような関係性なので「円が上がればドルが下がる」「円が下がればドルが上がる」という性質を持っています。
円もドルも両方持っていればどちらに転んでもリスクを下げることができます。
円安になれば為替差益がでる
前述のとおり、外貨建て保険には為替リスクがあります。
円高になると元本割れするリスクがあります。
ということは、反対に円安になれば円に戻したときにお金が増えるということです。
できるだけ円高のタイミングで外貨建て保険に加入して、円安になったら解約するという方法で利益を出すこともできます。
※ただし、保険商品や解約のタイミングによっては円安でも元本割れすることがあります。
海外留学する予定があればメリットがある
自分の子供や孫が将来海外留学する予定があれば外貨建て保険はメリットがあります。
例えば、アメリカ留学をする予定があれば留学時に米ドルが必要になりますから外貨建て保険に加入して運用するのも良いでしょう。
米ドルから円に戻す必要がありませんので、為替リスクがなくなります。
月払・年払の保険は貯蓄と死亡保険を兼ねられる
まだ若い人が外貨建て保険に加入する際は、外貨建て保険を活用して貯蓄と死亡保険を一緒にすることができます。
子供がまだ小さくて死亡保険に加入したい場合などは、
- 学資金を貯める
- 死亡保険を用意する
の2つの目的で1つの外貨建て保険で兼ねることができます。
亡くならなければ外貨の高い利率で資産運用ができますし、もし亡くなってしまった場合は死亡保険金が給付されます。
生命保険ですから契約してすぐに亡くなっても死亡保険金は満額でます。
例えば、
- 月払い1万円
- 死亡保険金1000万円
の外貨建て保険に加入して1ヶ月後に亡くなっても、死亡保険金は1000万円給付されます。
「貯金は貯金、保険は保険」というように分けるではなく、貯蓄と死亡保険を兼ねることで家計にも優しいです。
為替リスクを減らす「ドルコスト平均法」とは?
年齢が若い人は一時払いではなく月払いの外貨建て保険も検討しましょう。
一括で外貨を購入することで為替リスクが大きくなるため、分割で支払うことで為替リスクを軽減できます。
分割で外貨を購入する方法を「ドルコスト平均法」といいます。
下の表は、毎月1万円で買えるだけのドルを買っていくのと、一括9万円でドルを買うのを比較したものです。
為替は必ず波を打つため、1$=100円から90円、80円、70円、60円と円高になり、その後1$=70円、80円、90円、100円と円安になった想定です。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
1$の為替 | 100円 | 90円 | 80円 | 70円 | 60円 | 70円 | 80円 | 90円 | 100円 |
毎月1万円 | 100$ | 111$ | 125$ | 142$ | 166$ | 142$ | 125$ | 111$ | 100$ |
一括9万円 | 900$ | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
両方とも購入金額は9万円です。
表のとおりに毎月1万円で買えるだけのドルを9ヶ月購入した場合、9月の段階で持っているドルは、
100$+111$+125$+142$+166$+142$+125$+111$+100$=1122$
です。
一方、一括で9万円分のドルを購入した場合のドルは900$です。
9月の段階でドルを円に戻してみると、
- 毎月1万円のケース:1122$×100円=112200円
- 一括9万円のケース:900$×100円=90000円
となり、①毎月1万円でドルを購入するケースの方がお金が増えています。
なぜこのようになるかというと、為替が円高になったときにたくさんのドルを購入できるためです。
一括で外貨を購入するよりも、毎月分割で外貨を購入する方が為替の平均値をとれるため、リスクが小さくなります。
外貨建て保険は加入する目的を明確にしましょう
前述のとおり、外貨建て保険にはメリットとデメリットがあります。
メリットとデメリットを理解した上で、加入する目的を明確にすれば外貨建て保険はメリットのある保険です。
例えば、
- 60~65歳までの年金が少ない期間の生活資金を運用したい
- 今は遣わないお金だが10年後から遣いたい
- 貯蓄と死亡保険を兼ねたい
- 学資金を貯めたい
- お金を運用しながら相続税対策をしたい
- お金を運用しながら特定の家族に死亡保険金を渡したい
- 子供や孫の海外留学資金を運用したい
- 生命保険料控除を使いながら運用したい
- 安くて掛け捨てでない死亡保険に加入したい
などです。
本来は銀行窓口でもこうした細かいヒアリングやコンサルティングが必要なのです。
保険はわかりにくい金融商品であるため、まずは顧客のニーズをしっかり聞きださないと最適な提案ができません。
「定期預金より増えますよ」など、窓口で立ち話で契約するような簡単な金融商品ではないのです。
定期預金のように単純でない金融商品だからこそ、外貨建て保険には定期預金にはできない様々なメリットがあります。
※銀行窓口の職員さんの保険スキルは様々ですので、コンサルティングができない人もいます。
外貨建て保険を勧められた場合のチェック項目をお伝えしておきます。
- あなたの家族構成を聞かれたか?
- あなたの投資経験を聞かれたか?
- 死亡保険金受取人を誰にするべきかのヒアリングとコンサルティングを受けたか?
- あなたにとって外貨建て保険に加入することでも税制優遇は何かを教えてくれたか?
- お金が増えるだけでなく、あなたにとって具体的にどのようなメリットがあるかの説明を受けたか?
- リスクの説明を受けて、あなたが人に話せるレベルで理解できたか?
- あなたに必要な資金を計算してくれたか?
などです。
①の家族構成は保険を提案する以上最低限聞かなければいけないことです。
家族構成もわからないのにどうやって死亡保険金受取人を誰にするかのコンサルティングを行うのでしょうか?
⑤のあなたにとって具体的にどのようなメリットがあるのかの提案も重要です。
あなたのことをよく聞かないと「あなたにとって具体的にどのようなメリットがあるのか」は提案できません。
「お金が増えますよ」だけで提案する人は、正直外貨建て保険のことをよくわかっていないと思ってください。
⑥のリスク説明も大切です。
あなたがリスクを人に話せなかったら外貨建て保険に加入してはいけません。
「リスクを話せない」ということは「リスクを理解していない」ということです。
老後に必要な資金はきちんと計算しましょう
外貨建て保険を「老後資金にどうですか?」と提案する販売員の人もたくさんいますが、そもそもあなたに必要な老後資金を計算してくれなければ外貨建て保険に加入してはいけません。
何のために外貨建て保険に加入するかが曖昧すぎます。
老後資金の計算に必要なのは、
- 現在の貯蓄額+今後入ってくるお金(給料・年金など)
- (1ヶ月の生活資金×12ヶ月+年間余裕資金)×平均寿命までの年数
です。
例えば、現在67歳の女性で、
- 現在の貯蓄額:1000万円
- 今後入ってくるお金:年金240万円×20年(女性の平均寿命まで)
- 1ヶ月の生活資金:17万円
- 年間余裕資金:100万円
であれば、
現在の貯蓄額1000万円+今後入ってくるお金(年金240万円×20年)-(1ヶ月の生活資金17万円×12か月+年間余裕資金100万円)×20年=マイナス280万円となります。
マイナス280万円を補うための対策をとる必要があります。
では、今後20年でマイナス280万円を補う方法には何があるのか?
- 投資信託
- 債券
- 保険
- 不動産
- 株式投資
など様々な手法があります。
外貨建て保険はマイナス280万円を補うための1つの手段・選択肢でしかありません。
20年で280万円補うということは、単純計算で280万円÷20年=14万円となり、1年で14万円の利息を出せれば良いということです。
例えば、現在の貯蓄から数百万円をリスクの低い投資に回すことでも年間14万円の利息を生み出すことはできるでしょう。
外貨建て保険の利率でも十分可能な範囲です。
なおかつ、年金受け取りができたり、死亡保険金を特定の家族に指定するなど外貨建て保険にできることはたくさんあります。
販売員がここまでコンサルティングしてくれるかどうかが大切です。
ただ「お金が増えますよ」といって外貨建て保険を勧めるのが、いかに無計画かわかりますよね。
外貨建て保険に加入するときは、販売員のヒアリング・シミュレーション・コンサルティング力が必要なのです。
まとめ
いかがでしたか?
国民生活センターに外貨建て保険の苦情が来ている理由がなんとなくわかりましたか?
外貨建て保険自体は良い保険なのですが、売り方が悪いと苦情に発展してしまうのです。
もちろん、今後は販売員のスキルが上がって外貨建て保険の苦情は減るでしょう。
外貨建て保険に加入する前にリスクを確認して「何のために加入するのか?」を明確にしましょう。
外貨建て保険に加入する目的がわからなければ加入しないでください。
「お金が増えますよ」などの勧誘で安易に加入するとトラブルの元です。
外貨建て保険を最大限に活用するには、販売する側にヒアリング力・コンサルティング力が必要です。
決して悪い保険ではないだけに、目的を明確にすれば大きなメリットがあります。
実は、当相談センターにも外貨建て保険の苦情や相談が多く寄せられています。
すでに外貨建て保険に加入してしまって保険会社や銀行と揉めている場合はあまりお役に立てないことも多いですが、
「ちょっと聞いてみたい」
「どう思いますか?」
「外貨建て保険を勧められているが、販売者ではない第三者の意見を聞きたい」
「どの外貨建て保険が良いのかわからない」
などの相談に対応しています。
※くどいようですが、中には当相談センターでも解決できないこともありますので、あらかじめご了承ください。
ですが、お問い合わせ・相談をいただくこと自体はできますので、外貨建て保険に関する相談がある方は下記までお気軽にお問い合わせください。
相談料は無料です。
あなたのお役に立てば幸いです。